【まちづくり】しまなみ海道サイクルオアシスの施設数の変遷

現在、しまなみ海道にはサイクルオアシスというサイクリングの休憩ポイントが、地元の店舗や企業などに200ヶ所以上設置されています。サイクリストは空気入を借りれたり、ボトルへの水の給水、トイレを借りたりすることができます。サイクスオアシスの数の変遷から、しまなみ海道でのまちづくりの歴史を探ります。

こんにちは。しまなみ海道在住のサイクリスト・カワイユキと申します。しまなみ海道は初心者の方でも自分のレベルに合った情報をもとに準備すれば大丈夫!自転車でゆっくり旅する魅力をお伝えします。
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しまなみサイクルオアシス
地元参画型のサポート
しまなみ海道でさまざまに整備が進められているサイクリングサポートの仕組みの中でも「しまなみサイクルオアシス」は、地元住民参画型という点で独自性が高い取組みのひとつです。地域に住む方々が主体となって、サイクリストに休憩場所をボランティアで提供する仕組みとなっています。四国には88カ所のお寺を巡る"お遍路"では、巡礼の方に無償で休憩場所や補給を提供する「お接待」という文化がありますが、このお接待文化を自転車旅行者に置き換えて仕組み化したものと言えるかもしれません。
5つのサポート

しまなみサイクルオアシス登録施設(飲食店・お土産店・ガソリンスタンド・コンビニ・宿泊施設など)では、主に5つのサービスを提供しています。貸出用空気入れの配備、ボトルへの給水、トイレの貸出、ベンチなどの休憩スポット、インフォメーション提供です。必ずしも休憩場所が多くなかった瀬戸内海の島という立地で、こうしたサービスは自転車旅行者にはとてもありがたいです。
地元民と旅行者の交流
2011年からこの仕組みの整備を始めたNPO法人シクロツーリズムしまなみでは、そうした「旅行者と地元の人たちの交流場所」としての機能が強調されています。せっかく遠方からサイクリングに来ている旅行者をおもてなししたいマインドのある地元の人たちと旅行者の接点は意外と多くありません。ちょっと休憩しているときのひとこと、ふたことの会話などは旅の思い出のひとつになるものです。
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サイクルオアシスの変遷
20ヶ所から200ヶ所へ
最初は20ヶ所からスタート
2011年のしまなみサイクルオアシスの最初の整備では、しまなみ海道の愛媛県側とゆめしま海道の島々に計20ヶ所設置されたようです。これらの20ヶ所のうち、いくつかは既に閉業していますが、当初からしまなみサイクルオアシスの仕組みに関わっている老舗と言えるかもしれません。
ペンションみなみうら 今治市吉海町
できかけ教室 今治市吉海町
民宿千和 今治市宮窪町
正味集会所 今治市吉海町
ポーチュラカ西部 今治市伯方町
お好み焼きさくら 今治市伯方町
伯方直売所伯彩 今治市伯方町
道の駅マリンオアシスはかた 今治市伯方町
井上いちご農園 今治市上浦町
工房こりん 今治市上浦町
すりぃ~わぁ~るど 今治市大三島町
万福寺 今治市大三島町
菰隠温泉 越智郡上島町岩城
岩城物産センター 越智郡上島町岩城
倉本石油 越智郡上島町岩城
しまでカフェ 越智郡上島町弓削
潮湯 越智郡上島町弓削
フェスパ 越智郡上島町弓削
立石港務所 越智郡上島町生名
現在は230ヶ所
その後、全く同じデザインや仕組みでしまなみ海道の広島県側にも、しまなみサイクルオアシスが設置され、設置数も増加しています。2013年には今治市街地、2014年には今治~松山間のはまかぜ海道沿いに「はまかぜサイクルオアシス」として仕組みが作られた記録がありました。なお、現在この「はまかぜサイクルオアシス」という呼称は廃止され、「サイクルオアシス」に統一されているようです。
2016年には愛媛県全体に拡大し、愛媛県内で362ヶ所もの場所が「サイクルオアシス」として認定されています。この背景には、愛媛県が県全体にサイクリングルートを整備した「愛媛マルゴト自転車道」の取組みがあるようです。現在、しまなみ海道エリアだけでも230ヶ所のしまなみサイクルオアシスが整備されています。ゆめしま海道や御調エリアも含むと247ヶ所となります。
さまざまな学術論文でもしまなみ海道のサイクルツーリズムによる地域振興は研究テーマになっていて、とくにサイクルオアシスを取り上げているものもいくつかあります。それらの論文や寄稿文から変遷を読み解くとしまなみ海道エリアのサイクルオアシスの数は2016時点では123ヶ所(溝尾 2017)、2019年時点では177ヶ所(中尾 2021)と記録されています。年々、その数は増加傾向にあるようです。
サイクルオアシス数の変化
サイクルオアシスの登録施設数の変化は、地域がしまなみ海道サイクリングのサポートに参画してきた変遷とも言え、まちづくりとしてのサイクリングがどのように盛り上がって来たかの歴史のひとつであると感じています。しかしながら、サイクルオアシスの数の変化は論文などでも見たことがありません。そこで、サイクルオアシスの施設数を分かる範囲で独自調査してみました。

2011年から2025年までのしまなみ海道のサイクルオアシス施設数の変化をグラフにしてみました。Wayback Machineという過去のウェブサイト情報を閲覧できる機能を使って、尾道市のサイクルオアシスウェブサイト、今治市のサイクルオアシスのウェブサイトからカウントしました。
今治市のカウント数には上島町(ゆめしま海道)のサイクスオアシスも含んでいますが、松山市など愛媛県のその他エリアのサイクルオアシス数は含んでいません。一方で尾道市はしまなみ海道から少し離れた御調エリアのサイクルオアシスの数も含んでカウントしています。
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詳しいサイクルオアシス施設数
年度 | 今治市・上島町 | 尾道市(御調を含む) | 合計 |
---|---|---|---|
2011 | 20 | 16 | 36 |
2012 | 34 | 22 | 56 |
2013 | 34 | 22 | 56 |
2014 | 34 | 34 | 68 |
2015 | 39 | 71 | 110 |
2016 | 52 | 75 | 127 |
2017 | 52 | 75 | 127 |
2018 | 52 | 97 | 149 |
2019 | 70 | 107 | 177 |
2020 | 70 | 107 | 177 |
2021 | 103 | 126 | 229 |
2022 | 107 | 136 | 243 |
2023 | 99 | 148 | 247 |
2024 | 100 | 147 | 247 |
2025 | 103 | 144 | 247 |
ローカル感をコンセプトにしていた今治市側と違って尾道市側では、当初からコンビニエンスストアなどの大手ショップもサイクルオアシスに登録していることで施設数を延ばしています。今回調査してみて、今治市側でも尾道市側でも、店舗の閉業などに伴い施設の入れ替わりがかなりあったことが分かりました。今治市側では2012年以降に今治市街地の施設の登録を増やし、2021年以降はその数が安定しています。
しまなみ海道の開通から10年ちょっと経った2011年から、サイクルオアシスの取組みはまたそこから10年近くの年月をかけながら、2021年に200ヶ所を超えています。この10年でしまなみ海道のサイクリングルートとしての知名度はサイクリング愛好家だけでなく一般にも浸透しつつあります。また海外からの注目度も高く、2027年には国際自転車会議が愛媛県で開催される予定です。

これまでデータを見たことがなかったサイクルオアシスの数を見える化してみました。
このページでは、しまなみ海道の休憩所、サイクルオアシスの変遷についてご紹介しました。初心者から上級者まで幅広い方が自転車旅行を楽しめるしまなみ海道のサイクリング情報は以下のページにまとめておりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。