【実測解説】しまなみ海道サイクリングロードの距離とアップダウン

2024年2月26日

しまなみ海道の距離

どれが正しい距離なの?

ふだん、ロードバイクなどのスポーツタイプの自転車に乗らない方だと、自転車を使うのは買い物や通勤・通学程度という方も多いはず。都市部に住んでいれば、移動手段として地下鉄やバスで十分足りるという場合もあるでしょう。時速10㎞~20㎞程度で走ることができる自転車は、趣味でない限り、数キロ圏内が自転車での行動範囲という方が多数だと思います。そんな中、自転車で50㎞とか、100㎞と言われても実感的にしっくりこないという方も多いのではないでしょうか。

【写真】距離とアップダウン:しまなみ海道の距離を調べてみる
しまなみ海道の距離を調べてみる

「しまなみ海道がサイクリングスポットとして人気」と知って興味を持った方がまず最初に調べることのひとつに、「どれくらいの距離があるのかなぁ」という疑問がありますね。テレビや雑誌などのメディア、実際にサイクリングした人のブログ、ガイドブックなどをみていると

広島県と愛媛県との間の風光明媚な芸予諸島を島伝いにつなぐ、総延長59.4kmの本州四国連絡道路は(後略)。

4travel.jp

全部で6つの島と6つの橋を通り瀬戸内海を横切るつくりになっています。最短で抜けると全長80㎞ほどになります。

Y’s Road

「しまなみ海道」100キロメートル、サイクリングの旅!

CALEND-OKINAWA

「59.4㎞」「80㎞」「100㎞」などなど、どれがホント?と思うくらいなぜかバラバラの数字が出てきます。媒体によって「しまなみ海道の距離」の数字が異なるのはなぜでしょう。実はしまなみ海道の距離がまちまちで様々な記述があるのには、いくつか理由があるんです。

しまなみ海道の距離がバラバラな主な理由
①.高速道路と自転車道が混同されている場合があるから
②.スタートとゴール位置をどこにするかが違うから
③.いくつものサイクリングルートがあるから

結論から言うと、

「しまなみ海道自転車ルートの距離は最短で70~80㎞」

というのが、しまなみ海道の自転車旅行で最もポピュラーなJR今治駅スタート&JR尾道駅ゴールでメインルートをサイクリングした場合の距離として、ある程度妥当な数字です。細かな違いや誤差などもありますが、初心者の方が、自転車旅行をプランニングする上で参考にすべき数字だと思います。60㎞と100㎞だとだいぶ計画が変わってきますからね。

移動手段コース区間・経由など距離
クルマ高速道路の距離今治IC~尾道大橋IC60km
自転車メインルートの最短距離サンライズ糸山~尾道駅70km
自転車メインルートの最短距離今治駅~尾道駅76km
自転車上級者向け縦断コース大島・伯方島・大三島外周経由127km

もちろん、これはしまなみ海道の全線を走破する方に向けての距離情報です。ルートの一部だけを走ったり、ひとつの橋だけをサイクリングしてみたりといったプチ体験を気軽にできるのも、しまなみ海道の素晴らしいところです。1日や半日で楽しむモデルコースはこちらをご覧ください。

それでは、正確な距離に関して、詳細を検証していこうと思います。

それでは、しまなみ海道のサイクリングの正確な距離に関して、詳細を検証しながらご紹介していこうと思います。

高速と自転車道の距離の違い

「しまなみ海道」という名称は、主に芸予諸島の6つの島々を通って本州と四国を結ぶルートの総称なので、高速道路「西瀬戸自動車道」も「しまなみ海道」と呼ばれ、サイクリングロードも「しまなみ海道」と呼ばれています。例えば、Googleマップで「JR今治駅からJR尾道駅」のルートと距離を調べてみましょう。

【スクリーンショット】距離とアップダウン:64.1㎞のルートは高速道路、西瀬戸自動車道
64.1㎞のルートは高速道路、西瀬戸自動車道

Googleマップで調べると、しまなみ海道の距離は64.1㎞(クルマで1時間1分)と表示されました。このルートは高速道路「西瀬戸自動車道」を走行するルートで、今治北ICから、しまなみ海道の高速に乗り、尾道大橋ICにて降りるようになっています。実際には、自転車で通る道は橋の上だけが一致しているだけで、島内でサイクリングするコースはこのルートとは全く違います

「しまなみ海道の路線延長は59.4㎞」という数字は、しまなみ海道の高速道路の部分、「西瀬戸自動車道」の尾道大橋ICから今治ICまでの距離のことを指しています。

【写真】距離とアップダウン:自転車道と原付専用道の入り口
自転車道と原付専用道の入り口

自転車でしまなみ海道を渡る場合には、自転車歩行者道や原付バイク専用道の入り口はインターチェンジとは違う場所にあるので、このGoogleマップの誘導の通りに今治北ICに行っても自転車で進入することはできません。(125㏄以下の原付バイクは、自転車道と同じように原付レーンを走行できます)。

【写真】距離とアップダウン:来島海峡大橋の上の自転車歩行者専用道
橋の上の自転車歩行者専用道

しまなみ海道のサイクリングロードは、橋の上だけを高速道路に並走する形で進み、それぞれの島では一般道へと降りて島内をサイクリングする仕様になっています。よく勘違いされがちなのですが、ずっと高速道路の横を通るわけではありません。

ということで、自動車用ルートではなく、より自転車のルートに近いものを表示することを目指します。Googleマップには2020年頃から自転車用ルート検索機能が搭載されていますが、当該地域では現時点(2022年8月現在)ではまだ導入されておらず、自転車用ルートを検索することができません。

【スクリーンショット】距離とアップダウン:Googleマップの徒歩モードで検索してみたら・・・
徒歩モードで検索してみたら・・・

それならばと徒歩モードで検索してみると、このような3つのルートが出ています。今治港から高速船で因島の土生港まで行き、歩いて因島と向島を縦断するルートが最短最速と出ました。船を使わないルートを選びたいので、オプションを表示からフェリーを不使用にしてみました。

【スクリーンショット】距離とアップダウン:Googleマップの徒歩モードのフェリー不使用で検索
徒歩モードのフェリー不使用で検索

徒歩モードでフェリー不使用にすることで、橋を渡り、島内の一般道を進むルートが表示されました。しまなみ海道では歩行者と自転車はほぼ同じルートを通るので、これはかなり正確なものが表示されているように見えます。しまなみ海道のいわゆるメインルートと呼ばれるルートとは、生口島、因島、向島の各島々でこれとは別のルートを通るので、少し修正が必要です。

【スクリーンショット】距離とアップダウン:しまなみ海道徒歩モードの結果を一部修正
徒歩モードのルートを一部修正

修正してみると、78㎞という数字になりました。ほぼほぼしまなみ海道サイクリングメインルートの距離といって間違いない距離になったと思います。ただしフェリー不使用としているために向島から尾道へは一般的な渡船ではなく尾道大橋を渡るルートになってしまっています。また残念ながら、一部で自転車では通らないような細い道(一応、最短ではある)に誘導されてしまいます。

数年前まで、しまなみ海道の橋は高速道路ルートのみが反映されていたので、この徒歩ルートを表示することはできませんでした。しまなみ海道の来島海峡大橋などが徒歩ルートとして反映されてからだいぶ便利にはなりました。とはいえ、しまなみ海道サイクリングの計画においてGoogleマップの検索は、初心者の自転車旅行者にとっては正確な情報を得るのに少し使いにくい印象です(現時点では)。やはりサイクリング専用の地図やガイドブックを活用するのがオススメです。サイクリングマップなどの情報はこの記事の最後の方で紹介しています。

高速道路のしまなみ海道と、サイクリングロードのしまなみ海道は、入り口やルートも違います。ガイドラインの「ブルーライン」と看板に沿って行けば、簡単に自転車の走行ルートが分かるようになっています。

スタート&ゴール地点の違い

しまなみ海道のサイクリングロードの距離が、書かれている媒体によって異なる理由の一つに、行政的に定められている起終点と、実際に自転車旅行に来る方の多くの起終点が少し異なることが挙げられます。例えば、国土交通量で指定されてた第1次ナショナルサイクルルートとして指定された報道資料を見ると、しまなみ海道サイクリングロードは延長70㎞とありますが、スタート地点は「広島県尾道市 JR 尾道駅」、ゴール地点は「愛媛県今治市 サンライズ糸山」となっています。

第1次ナショナルサイクルルート

名称延長起終点及び経過地
つくば霞ヶ浦りんりんロード
(英語)Tsukuba-Kasumigaura
      ring-ring road
176km自:茨城県桜川市 JR 岩瀬駅
至:茨城県潮来市 水郷潮来バスターミナル
ビワイチ
(英語)Biwaichi
193km自 滋賀県大津市 瀬田唐橋
至 滋賀県大津市 瀬田唐橋
(琵琶湖岸一周(反時計回りの一方通行))
しまなみ海道サイクリングロード
(英語)SHIMANAMI KAIDO
     cycling road
70km自:広島県尾道市 JR 尾道駅
至:愛媛県今治市 サンライズ糸山
国土交通省 報道発表資料より引用

サンライズ糸山は、しまなみ海道の最も長い橋、来島海峡大橋の今治側の麓にあるサイクリングの拠点施設で、中央レンタサイクルターミナルという別名もついています。来島海峡大橋の写真スポットとしても人気の高い施設です。駐車場があるので、ドライブでしまなみ海道を訪れ、来島海峡大橋や大島だけをサイクリングする方などの利用が多いです。

【写真】距離とアップダウン:サンライズ糸山のレンタサイクルターミナル
サンライズ糸山のレンタサイクルターミナル

ただし、実際には愛媛県今治市のサイクリングターミナルである「サンライズ糸山」は公共交通でのアクセスが非常に悪いため、しまなみ海道全線を走破することを目指す方は「JR今治駅前サイクリングターミナル」を利用されることも多いんです。予讃線、今治駅のちょうど目の前で今治市街の中心からも近いこともあり、立地がとても良いと思います。

【スクリーンショット】距離とアップダウン:JR今治駅前からサンライズ糸山
JR今治駅前からサンライズ糸山

GoogleマップでJR今治駅からサンライズ糸山までの距離を、サイクリングルートであることを示すブルーラインが引かれているルートにそって表示してみました。JR予讃線に沿って今治の市街地を通る形でブルーラインは引かれています。

【写真】距離とアップダウン:今治駅前サイクリングターミナル
今治駅前サイクリングターミナル

サンライズ糸山からJR今治駅までは約6㎞あるので、これだけでも意外と大きな違いになります。JR今治駅のレンタサイクルターミナルは、以前は簡易的なもので「今治駅臨時レンタサイクルターミナル」という名称でしたが、2020年7月に「今治駅前サイクリングターミナル」として新築、規模も拡充されてオープンしました。

今治駅前からサンライズ糸山(展望台入口バス停)までは、平日だと1日3便しか路線バスが通っていないんです…。タクシーだと2500円ほどです。

走行するルートの違い

しまなみ海道サイクリングのパンフレットやガイドブック、実際にサイクリングした方のブログやYouTubeなどを見ていると、その距離の数字が全く違うということがあります。例えば、上級者の方のブログでは「今治→尾道120キロ」といった70~80kmという数字よりも大きな数字も見かけます。これはしまなみ海道サイクリングロードならではの現象だと思います。

【写真】距離とアップダウン:しまなみ海道はメインルートだけじゃない
しまなみ海道はメインルートだけじゃない

というのも、しまなみ海道のそれぞれの島には基本となるメインルートだけじゃなく、外周ルートという海沿いを回り込むコースも設定されているんです。どちらの道路にもガイドラインとなる「ブルーライン」が引いてあり、メインルートには「尾道 Onomichi ○㎞」「今治 Imabari ○㎞」のような表示があり、外周ルートには「外周コース Island explorer」と表示されています。

【写真】距離とアップダウン:しまなみ海道のブルーラインと距離表示
しまなみ海道のブルーラインと距離表示

同じ起終点の瀬戸内海縦断でもこれだけ多彩なルートが取れるのも、初心者から上級者までが同じエリアを自転車で楽しめる理由のひとつかなと思います。しまなみ海道を走破という共通性がありながら、レベルや旅の目的に合わせて様々なルートを取ることができます。

【写真】距離とアップダウン:参考にするブログやYOUTUBEはレベルにあわせて
参考にするブログやYOUTUBEはレベルにあわせて

上級者の方のブログなどに見られる100㎞を超えるような距離は、メインルートだけでなく外周ルートを走っている場合、しまなみ海道だけでなくゆめしま海道などの離島エリアも走行している場合、亀老山などのヒルクライムルートにも立ち寄っている場合、しまなみ海道を往復している場合などがあります。

【イラスト】距離とアップダウン:しまなみ海道は2日以上かけて縦断するのがおすすめ

レンタサイクルを借りてしまなみ海道を走破することを計画している初心者の方は、こうした上級者の方のブログではなく、初心者の方に向けた情報を参考にするようにしましょう。初心者の方では、しまなみ海道全線を楽しみながら走破するなら2日以上かけるのがオススメです。1泊2日で走破を目指す定番のモデルコースはこちらのページでご紹介しています。

2日走破の方のクチコミ
小学生の娘と80㎞のサイクリング頑張りました。2日にして正解!
大三島で一泊。瀬戸内海の島での滞在も非日常の体験でした。
事前にチェックしていたお店をコンプリート。カフェめぐりも満喫しました。