【どう変わった?】しまなみ海道の公共レンタサイクルの歴史と変遷

2024年2月12日

【タイトル】昔と今・しまなみ海道レンタサイクルの歴史と変遷

1999年のしまなみ海道開通を記念して数か月に渡って開催された大規模イベント「しまなみ海道’99」が、しまなみ海道レンタサイクルのはじまりです。しまなみ海道は当時、10近くの市町を通っていて、広島県と愛媛県の県境も跨いでいるため、一体となった包括的なレンタサイクルサービスの運用は難しかったであろうことが想像できます。貸出料金の変化や年間のレンタサイクル貸出台数の変化などから、しまなみ海道レンタサイクルの歴史や変遷を紐解いてみたいと思います。

アドバイザー・ライター
カワイユキ

こんにちは。しまなみ海道在住のローカルポタリストのカワイユキと申します。自転車でゆっくり旅するスローサイクリングの魅力をお伝えできればと思います。しまなみ海道は自分のレベルに合った情報を集めて準備すれば初心者の方でも大丈夫!サイクリングの計画に、ぜひご活用ください。

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レンタサイクルの変遷

開通時のレンタサイクル

しまなみ海道は開通時の1999年時点でも、「本州から四国まで徒歩や自転車で渡れる唯一のルート」としてPRの材料のひとつになっていて、実際に自転車で走ってもらうためにレンタサイクルの仕組みが整備され、サイクリングイベントも開催されていたようです。現在のしまなみレンタサイクルの仕組みは、しまなみ海道の開通に合わせて開催された「しまなみ海道’99」という大規模な完成記念イベントの中で設置されたレンタサイクルのターミナルが基になっています。

【写真】しまなみ海道の歴史:しまなみ海道開通当時の資料「しまなみ海道’99」
しまなみ海道開通当時の資料「しまなみ海道’99」

1999年のレンタサイクルサービス開始当初は、広島県側が「広島県しまなみ海道’99イベント協会」、愛媛県側が「今治市、吉海町、宮窪町、伯方町、上浦町、大三島町」の各自治体によりそれぞれのターミナルが管理されていました。1999年5月~10月まで開催されたそのイベントが終了後は、広島県側が「広島県瀬戸内しまなみ海道周辺地域振興協議会」に引き継ぎ、尾道駅前のしまなみ交流館に管理センターが置かれました。

しまなみ海道の開通は地元の悲願だったこともあり、長期間さまざまなイベントで盛り上がったそうです!

レンタサイクルの料金変遷

1999年の開通当初は、レンタサイクルを借りるのは数時間程度のレジャーサイクリングを想定していたようです。実際に、1999年4月の地元新聞に、開通前に新聞記者が今治~尾道まで自転車で駆け抜けた体験記事が載っていますが、サイクリング関係者からは「ある程度アップダウンも距離もあるため、走り抜けるにはサイクリングのある程度の練度が必要」とコメントされています。

しまなみ海道の開通を伝える当時の記事(愛媛新聞1999.5.1より引用)
しまなみ海道の開通を伝える当時の記事(愛媛新聞1999.5.1より引用)

1999年4月22~24日に開催された「瀬戸内しまなみ海道国際スリーデーウオーク」など徒歩イベントが多く、1999年4月25日に開催された「来島海峡大橋開通記念サイクリング大会」などサイクリングイベントは限定的だったようです。

藤田広島県知事と加戸愛媛県知事の対談よりしまなみ海道の自転車について抜粋(愛媛新聞1999.5.1より引用)
藤田知事と加戸知事の対談より抜粋(愛媛新聞1999.5.1より引用)

しまなみ海道の全線を完走したいというニーズの高さは当初から指摘されていて、例えばしまなみ海道開通当時の藤田雄山知事(当時の広島県知事)と加戸守行知事(当時の愛媛県知事)の対談では、両氏からレンタサイクル充実の重要性が認識されていて、加戸知事からは「レンタカーのように県を越えて乗捨てができる」理想が語られています。

しまなみ海道のサイクリング認知度があがるにつれて、4時間以内料金を廃止して1日料金にする、保証料金を設定して乗捨てする場合との価格差を付けるなどの取り組みがされてきました。2015年10月に大人1日につき1000円に料金改定されるまで、公共のレンタサイクルはかなり低価格を維持しており、初心者サイクリストやファミリー層へのしまなみ海道サイクリングの普及に大きく貢献していました。

1999年当時の料金

【引用画像】しまなみ海道のレンタサイクル:しまなみ海道開通イベント資料(しまなみ海道99公式記録)
99年当時のレンタサイクル(資料*から引用)

*瀬戸内海大橋完成記念イベント しまなみ海道’99 公式記録

レンタサイクル料金広島県側愛媛県側
大人用400円/4時間 保証料金1000円4時間以内400円 1日700円 保証料金1000円
子ども用300円/4時間 保証料金1000円4時間以内300円 1日600円 保証料金1000円
電動アシスト800円/4時間 保証料金2000円4時間以内800円 保証料金1000円

加えて、大人・子どもともに1時間加算100円(上限300円、泊料金500円)がかかりました。しまなみ海道開通当初、広島県側には280台、愛媛県側には356台のレンタサイクル用自転車が配備されていたようですね。

イベント終了後~2015年までの料金

種類大人子ども保証料金(乗捨て)
電動アシスト4時間以内 800円乗捨て不可
その他の自転車 1日につき 500円1日につき 300円1000円

1日で500円という料金設定は、現在でも他の観光地などで観光協会などが数台を運用しているようなレンタサイクルでよく見かける料金設定ですね。電動アシストが4時間以内だったのは、バッテリーの持ち時間に起因します。保証料金は乗捨て料金の役割を果たしていました。

料金の改定と値上げ

しまなみ海道の公共のレンタサイクルの貸出料金が、どれくらい変化してきたかをグラフにしてみました。濃い方の実線が、クロスバイクを2日間借りて他ターミナルで乗捨てるという、例えば今治~尾道を2日で縦断するプランの場合の合計金額です。薄い方の実線が、クロスバイクを1日のみ借りて同じターミナルに戻ってくるようなプランの場合の合計金額です。

【グラフ】しまなみ海道レンタサイクルの料金値上げの変遷

その後、民営化などに伴って2019年以降にたびたび料金改定があり、2021年に大人1日につき2000円、2023年9月の料金改定(大人1日につき3000円)が最新となっています。2023年9月の改定では保証料金の制度が無くなり、短時間のレンタサイクル利用を中心に最大1.5倍の値上げが話題となりました。

料金改定クロスバイク1台の貸出料金2日間借りた場合(乗捨て)
1999年開通時(しまなみ海道’99イベント期間中)4時間以内400円 1日700円1900円
しまなみ海道’99イベント終了後~2015年10月まで1日500円 保証料金1000円2000円
2015年10月~1日1000円 保証料金1000円3000円
2019年10月~1日1100円 保証料金1100円3300円
2021年7月~1日2000円 保証料金1100円5100円
2023年9月~1日3000円6000円

保証料金のシステム

瀬戸内海を縦断するように本州と四国を行き来できるしまなみ海道では、その特徴から「全線を完走したい」「すべてを渡り切りたい」というニーズは開通当初から根強く、そのために片道サイクリングの仕組みが整備されています。自治体を超えて運営されていても、協議会などの調整があり、全国的にも珍しい乗捨てシステムとなっていました。2023年の料金改定でこのシステムが廃止されるまで、しまなみ海道レンタサイクルの特徴的な仕組みでした。現在はよりシンプルに、乗捨てをしてもしなくても同じ料金となっています。

レンタサイクルターミナル変遷

開通当初のターミナル

1999年当時のターミナル

瀬戸内海大橋開通の完成記念イベント「しまなみ海道’99」内で、レンタサイクルターミナルが整備され、サービス事業が開始しました。当時は以下の15ヶ所にターミナルが設置されていたという記録が残っています。今はターミナルとしての役割はない尾道水道の渡船乗り場や、三原からのフェリーが頻繁に行き来していた重井西港などにもあったんですね。

広島県(旧市町村)レンタサイクルターミナル営業時間(時)
尾道市尾道フィッシャーマンズワーフ10~18
向島町尾道渡船乗り場9~18
向島町福本渡船乗り場9~18
因島市因島アメニティ公園10~18
因島市重井西港9~18
因島市土生港(因島市営中央駐車場)9~18
瀬戸田町瀬戸田港9~17
瀬戸田町サンセットビーチ9~17

広島県側のレンタサイクル所有台数は、8つのターミナル合わせて合計280台でした。因島アメニティ公園はイベント終了後に廃止されました。一方で、愛媛県側です。当時は合併で今治市に統合される前なので、島エリアでは各町に1か所ずつのターミナルという分かりやすい設置になっていますね。湯ノ浦温泉は来島海峡大橋から16㎞も離れているので、ターミナルがあったのが意外です。

愛媛県(旧市町村)レンタサイクルターミナル営業時間(時)
上浦町多々羅しまなみ公園9~17
大三島町しまなみの駅 御島9~17
伯方町マリンオアシスはかた(伯方SCパーク)9~17
宮窪町石文化伝承館(宮窪町石文化運動公園)9~17
吉海町下田水地区町営駐車場9~17
今治市今治市サイクリングターミナル サンライズ糸山8~20(冬季は~17)
今治市道の駅 今治湯ノ浦温泉8:30~17

愛媛県側のレンタサイクル所有台数は、7つのターミナル合わせて合計356台でした。電動アシスト自転車以外の自転車は、どのターミナルで乗捨てができるようになっていました。シティサイクルが主でしたが、クロスバイクなどのスポーツタイプの自転車も一部貸し出されていました。

その後のレンタサイクル

瀬戸内しまなみ海道周辺地域振興協議会(その後名称や組織の変更を繰り返し、2017年解散)といった複数自治体が関係した協議会がレンタサイクル業務を広島県側と愛媛県側を包括的に調整しPRする役割を果たしていました。実際にレンタサイクルを包括管理するのは、沿線に当時市町が10近くあったこと、県を跨いでいることから一括的な管理は簡単ではなかったようです。各島の自治体が愛媛県側は今治市、広島県側は尾道市となってからも、尾道観光協会、今治勤労福祉事業団などそれぞれ別の団体が仕切っていて、予約受付先も別々になっていました。利用者側からすると非常に不便な状況で、特に海外旅行者誘客のハードルとなっていました。

1999年時点でのしまなみ海道の市町村
1999年時点でのしまなみ海道の市町村

そんな中、広島県側のレンタサイクル事業が先に民営化を進めました。2007年に協議会から尾道市に運営元が移っており、長い間、尾道市は尾道観光協会に管理していました。2016年、(一社)しまなみレンタサイクル協会*に事業を民間委託。1年間の契約のみでしたが、事実上、公営から民営化に梶が取られた瞬間でした。これにより尾道側はインターネット予約ができるようになりました。なお、愛媛県側は2005年の自治体合併後にそのまま今治市が運営元になっていて、サンライズ糸山を運営する今治勤労福祉事業団が2022年まで委託管理していました。

*地元尾道市にある塗装メーカー「アンデックス」が出資して設立。凪ブランドの自転車も展開する企業。

しまなみジャパンによる一括管理

2017年に広島県側はしまなみレンタサイクル協会からDMO(一社)しまなみジャパンへと引き継がれました。このDMOは、そもそもレンタサイクルの一括管理を目指して立ち上げられた組織でもあります。長年、広島県側と愛媛県側で管理者が違うことによる利用者側の不便は、しまなみ海道での大きな課題となっていて、電話予約しかできないなど海外旅行者の誘客の足かせにもなっていました。

2022年になってようやく、愛媛県側の管理をしていた(一社)今治勤労福祉事業団がレンタサイクル事業から外れ、しまなみジャパンによるエリア全体の包括的な管理となりました。ウェブサイトでのレンタサイクル予約がすべてのターミナルでできるようになったのも、2022年になってからです。それまで愛媛県側のレンタサイクルはなんと電話予約のみでした。縦割りの強い行政において、自治体を複数跨いだエリアでひとつのサービスを提供することのハードルが、かなり高かったこと、難しかったことは容易に想像できますね。

イベント後のターミナル変遷

1999年の「しまなみ海道’99」イベント終了後にしまなみ海道のレンタサイクルターミナルは何度も変更、閉鎖、新設を繰り返してきました。向島町の2ヶ所は尾道市合併後の2008年に「尾道市マリン・ユース・センター」の1ヶ所に変更。2009年に「尾道市むかいしま市民センター」が新設されました。生口島の瀬戸田港は「瀬戸田観光案内所」に変更。宮窪町の石文化伝承館は「宮窪観光案内所」、吉海町の下田水地区町営駐車場は道の駅「よしうみいきいき館」へ移転されました。

開通当初のしまなみ海道のレンタサイクルに関する記事(愛媛新聞1999.5.3より引用)
開通当初盛況だったレンタサイクル(愛媛新聞1999.5.3より引用)

2010年には今治市内の「JR今治駅北高架下駐輪場」「今治市役所本館前駐輪場」「今治港駐輪場」がレンタサイクル返却専用スポットとして開設。提携している今治市内の宿泊施設でも返却ができるようになりました。2011年に「JR今治駅北高架下駐輪場」が「JR今治駅前臨時レンタサイクルターミナル」として貸出もするようになり、それに伴い「道の駅 今治湯ノ浦温泉」が事実上、このサービスから離脱しています。

2020年に「JR今治駅前臨時レンタサイクルターミナル」が「今治駅前サイクリングターミナル」として立派なターミナル施設が新設移転されました。これに伴い今治市役所が返却専用スポットの役割が終了しています。また、2022年にターミナルの大きな統廃合があり、大三島の「御島」が離脱、宮窪観光案内所、今治港のターミナルが廃止されています。現在は沿線に10か所のターミナルがあり、どこでも自転車を借りたり返したりすることができます。

ターミナルの主な変遷
1999しまなみ海道の広島県側に8ヶ所、愛媛県側7ヶ所にレンタサイクルターミナルが設置され運用開始。
2008向島の渡船乗り場2か所のターミナルが閉鎖。尾道市マリンユースセンターに新設。
2009大島の下田水地区町営駐車場から道の駅「よしうみいきいき館」へターミナルを移転。
2010愛媛県今治市内に返却専用のスポットが3ヶ所設置。指定の宿泊施設でも返却可能に。
2011JR今治駅前臨時レンタサイクルターミナルの新設。道の駅 今治湯ノ浦温泉の離脱。
2016尾道市側民営化で、マリンユース、重井西港、因島市民会館の3ヶ所を閉鎖。計15→12ヶ所に。
2016今治港みなと交流センター・はーばりーオープンに伴い、ターミナル新設。計13ヶ所に。
2020サンライズ糸山のターミナルが新築で拡大リニューアルオープン。
2020今治駅前サイクリングターミナルが新築での新設。臨時ターミナルの廃止。
2022大三島御島が離脱。大島宮窪、今治港のターミナルが統廃合により計3ヶ所閉鎖。計13→10ヶ所に。
2023電子決済を導入。同時に貸出用の書類などのペーパーレス化が進められた。

しまなみ海道は2019年に国交省の第1次ナショナルサイクルルートに選ばれるなど、世界基準での日本を代表するサイクリングコースとしての本格的な整備も進められています。近年はインバウンド旅行者の増加で、特にヨーロッパからのサイクリング旅行者がとても多くなってきた印象です。各種看板のユニバーサルデザイン化や英語併記なども進められており、公共のレンタサイクルではクレジットカードなどの電子決済も導入されています。

紆余曲折がありながらも、99年の開通からレンタサイクルはしまなみ海道を訪れる旅行者を長年、支えています。

レンタサイクルの貸出台数変化

地元の新聞や愛媛県や今治市、広島県のウェブサイトなどに、レンタサイクルの貸出台数は限定的に公開されていたので、いくつかの資料から、しまなみ海道の公共のレンタサイクルの貸出台数をグラフにまとめてみました。愛媛県と広島県のレンタサイクルターミナルで貸し出された台数を年度ごとに表示してみました。

しまなみ海道のレンタサイクル貸出台数のグラフ(1999年から2020年)

開通後は年間3万台前後で低迷していたことが分かります。年間3万台というと、1日平均で100台も貸出しされていないことになります。開通10周年ころからようやく貸出台数が増えてきたようです。世間一般にしまなみ海道=サイクリングの有名なコースと認知されてきたも、これ以降だと思います。2014年度に年間10万台を突破しています。なお、2015年以降は民間のレンタサイクル業者も増えてきましたが、今回の数字に民間のレンタサイクルは入っていません。

各年度の詳しいレンタサイクル貸出台数合計は、以下の表にまとめました。

年度貸出台数合計
199970,010
200044,808
200134,806
200232,162
200331,947
200430,477
200529,896
200635,478
200739,034
200841,926
200952,179
201048,178
201160,949
201274,872
201381,851
2014116,303
2015135,229
2016141,205
2017149,740
2018132,075
2019149,365
202074,928

2018年には西日本豪雨があり、しまなみ海道の一部が通行できない期間がありました。2020年はCovid-19の影響でレンタサイクルの営業をクローズしていた期間(主に緊急事態宣言が出ていた期間)が長かったです。貸出台数ピークは2017年度で15万台を超えています。これは1日当たり平均で400台以上借りられていた計算になります。

しまなみ海道をレジャー目的で訪れる旅行者の数の変化を知るのにひとつの指標になると思います。

しまなみ海道のレンタサイクル

現在のレンタサイクルサービス

現在のしまなみ海道のレンタサイクルサービスは、公共の「しまなみレンタサイクル」だけでなく、ジャイアントストアやローカルな自転車ショップなど、民間のサービスまで幅広く提供されています。以前よりも格段に選択肢が広がっています。自分に合ったレンタサイクルサービスをぜひ見つけてみてください。


このページではしまなみ海道サイクリングでとてもよく利用されているしまなみレンタサイクルの歴史と変遷ついてその詳細をご紹介しました。初心者でも安心してサイクリングを楽しめるのがしまなみ海道最大の特徴です。しまなみ海道サイクリングの詳しい情報は、以下のページにまとめておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

2024年2月12日レンタサイクル,今、話題の

Posted by カワイユキ